午後になると「ちょっとそこまでいくわ。」と席を立って様々な場所を見に行くことが習慣化しているAさん。理由をお尋ねしても明確に言葉にすることは難しい様子。ただAさんにとっては何かしなくてはならない気持ちがある事は事実です。

「お茶になりますよ」「帰りは16時ですよ」と現実的な言葉を投げかけてもなかなか納得は得られません。何もない場所に無目的に座るだけでは居心地が悪く、様々な刺激から気持ちを煽られ、気忙しく落ち着かなくなり、ご自身の中の“何か”を解決しようと何度も席を立たれます。

その“何か”から解放される時間を過ごしていただくために同世代のお仲間がいるお席にお誘いしました。職員がその方にも声を掛け、「○○さんがお隣にみえましたよ。」と声を掛けると、右手を伸ばし、「こんにちは。」とご挨拶。職員の介入はそこまでです。

その後はお2人で手を取って談笑し、お2人の周りは和やかな雰囲気が漂っていました。席を立つことはなくなり、お話に夢中なまま帰宅の時間を迎えられました。

ご利用時間内はデイサービスで過ごしていただかなくてはなりません。お客様本位でのアプローチを心掛けていますが、そのような時間の“枠”を意識しなければならない場面もしばしばあります。

そのような時、出来るだけストレスとならないよう多職種で様々な視点を持ちより、その方にふさわしいケアを提供しているつもりではいますが、状況が変わらない事も多いです。

今回職員が行ったことは、お二人が交流できる場面を設けたことのみです。

直接職員が関わりを持たなくても、その方らしさを踏まえて環境を整える事で安心に繋がりました。手を取りながら会話をするだけで相手に安心感を与えられる同世代のお客様のお人柄のおかげで、Aさんの不安な時間は楽しい時間と変化しました。